素材探求-No.6【伐採】

 

 今は年中伐採しています。木材は松、杉、唐松、広葉樹全部です。私はこの地で生まれ育ちました。仕事場はこの周辺1時間〜1時間半圏内です。ここの現場は約1ヶ月の予定で切っています。その現場で山に入る日数が変わります。ここの山は、樹齢50年ぐらいの木が多いんです。ここの木は切った後、山主さんの希望で広葉樹を植えます。やはり針葉樹を切った後は土が痩せているので、次に針葉樹を植えても育ちが良くないんです。
 ここは、昔から木炭産地なので、クリ、ナラ、などの硬木が多いんです。これらの木はホダ木として、この近くの種市町の名物しいたけ栽培用の原木になります。しいたけはこの近くでも盛んに栽培されています。そのほかここで切った針葉樹は地元の製材所や集成材工場に回ります。
 唐松のいいものは、建築用材になります。残りは土木用の杭材とか、紙の材料のチップになります。唐松の若い木はよれが多いのですが、50年を過ぎるとよれも少なくいい建築用材になります。でも集成材はもっと細い木でも十分です。10年程の樹齢の木で15cmくらいの木や、間伐材でもいいようです。今は少なくなりましたが、この辺りは昔から炭の産地でナラなどのかたい木はもともと炭に使われる事が多いのです。 ナラの木で30cm以上のものは、家具用の材料としても出します。

 山の木でもいい木は、より長く太くなるよう手入れをして切り出しますが、細いものや曲がったものは間伐材として早い内に切ってしまいます。細いものは根も弱くて、風や春の重い雪でも倒れやすいんです。
 広葉樹の場合は、特に植林はしなくても自然に種が飛んで来て生えてきます。あの辺は広葉樹なので、今切れば来年には木の芽が出て来ます。赤松なんかでも植える場合もありますが、切った後ブルドーザーで土を起せば、種が飛んで来て自然に育ってきます。この辺は多くは無いですが雪も降るので、冬は雪片付けもあって生産量も、がたっと落ちて仕事にならないんです。

 


 いまは、昔の「ききり」とは違ってきています。親父の頃は、馬や耕運機、トラクターで切った木材を切り出していました。今は、最新の機械が入ってきていますから、かなり効率良く生産されています。この機械も1ヶ月程前に入れました。車体が国産で、ヘッドがデンマーク製です。本体よりヘッドの方が高いんですよ。昔は全て人手に頼っていたんですが、この機械なんかは1台で8人分稼ぎます。この山の木は、1人で全部切っています。1人で1日300本程切っています。木材は1年の内、切る時期で価格や品質が変わるので山の見方や切り出すタイミングを間違えると損をしたりします。その辺りも難しい所です。設備投資した分頑張らないといけません。厳しいですよ。

 私は、男3人兄弟の長男です。親父の手伝いを17年やって、独立して4年目になります。親父から直接仕事のやり方を教えてもらった記憶はほとんどありません。見よう見真似で覚えてきました。本当に口数の少ない親父だったんです。おじいさんが炭焼をやっていて、親父が林業、私は木切りで山の仕事は3代目になります。親父は今、隠居で私の手伝いをしてくれています。おじいさんは20年ほど前亡くなりました。周りがそんな環境だから自分は生まれた時からこの仕事やるんだなと思っていました。自分ではとても楽しい仕事だと思っています。
 私の親父は、まず仕事を休んだことがありません。毎日、毎日山に行って一生懸命働いている思い出しかないです。休むのは、雨降りの日ぐらいです。無口な親父だったので、私は親父の仕事を見て覚えました。仕事について教えるという事はなくて、困った時に相談するとほんの少しボソッと話すだけで、特にこうしろ、ああしろという指示はしない人でした。特に代替わりしてからは、「好きなようにやれ」「もうけはお前の成果だし」「損をすればお前の責任だから」「自分は手伝うけれど、責任は自分で取れ。自分で良いと思えばやればいいし。自分が手伝い出来る事はするから。」と言われます。

 


 親父は、普段も自分たちに対して怒るという事はまずない人でした。ただ、怒った時は本当に怖い人です。あんまり怒らないけど、怒る時は一言でガツンと怒られて、後に引かない叱り方でその場で終わりです。最近はないけれど。おじいちゃんは、これまた厳しい人で、怒ると叫ぶ、すごく怖い人でした。対照的に、親父は何も言わない人。親父は無口だから、目で殺されるような感じです。目で睨まれて言葉を殺してその目を見ただけですくんでしまいます。その目が変わった瞬間引きますね。まずいな!と感じます。親父の目の黒いうちはって感じですね。

 私は、今39歳です。自分は今子供は4人、女、女、女、男の、上が女3人、一番下が男です。私は仕事ばっかりで、子供達にかまう時間が本当に少ないですね。ですから朝早くから夜遅くまで仕事を1番に考えてしまっています。でも、年1回の子供たちの運動会は楽しみにしています。